設置と運転音
エコキュートを置く場所は、隣の家の寝室からも離す——消費者安全調査委員会は、運転音で眠れないという申出を調べ、19事案のうち13事案で寝室まで5m以下だったと報告していました
エコキュートを選ぶとき、目が向くのは本体の値段や補助金、タンクの容量でしょう。屋外に置くヒートポンプユニットの置き場所は、工事の日に決まることも多い部分です。
ところが、その置き場所をめぐって、国の調査が行われたことがあります。隣の家のヒートポンプ給湯機の運転音で眠れなくなった、という申出がきっかけでした。
調べたのは、消費者庁に置かれた消費者安全調査委員会です。平成26年12月19日に報告書をまとめ、同じ日に経済産業省・環境省・消費者庁・公害等調整委員会へ意見を出しました。
ヒートポンプ給湯機は、深夜の電気で湯を沸かす仕組みです。動く時間帯が、ちょうど人が寝ている時間と重なります。報告書が扱ったのも、自分の家ではなく、隣の家の機械の音でした。
この記事では、報告書の概要と意見の2つの PDF を開き、設置の場所について書かれた文を中心に、原文のまま並べます。2026年9月27日に消費者庁の頁から取った版です。
扱うのは、報告書に何が書かれていたかまでです。自分の家の音が健康に影響するかどうかは、この記事では判断しません。報告書自体も、低周波音が人体に与える影響には不明な点があると書いています。
・ヒートポンプ給湯機は、一般的に午後11時から午前7時に動く(報告書の概要)
・調べた19事案のうち13事案で、発症者の寝室までの距離が5m以下だった(同)
・業界団体の据付けガイドブックは、寝室の傍を避けるなど3点を示している(同)
・そのガイドブックの認知率は、電器店・電気工事業者で約2割だった(同)
・委員会は、経済産業省などに、設置の注意を消費者に伝える取組を求めた(意見)
ヒートポンプ給湯機は、いつ、どこから音が出るの?
エコキュートって、夜中に動いているの?
概要は、仕組みの説明から始まります。屋外のヒートポンプユニットで湯を作り、貯湯ユニットに蓄える形です。動く時間帯について、次の文がありました。
深夜電力を利用するため、一般的には午後11時から午前7時までの時間帯に稼動する。
音の出どころも、ひとつの文にまとめられています。
ヒートポンプ給湯機の運転音は、主にヒートポンプユニットから生じる。
ユニットの中には、コンプレッサーとファンという2つの回る部品があり、それぞれが音を出すと概要は説明します。貯湯タンクのほうではなく、屋外の機械の置き場所が音の出る場所です。
どんな申出があったの?
国が調べるほどの申出って、どんな内容だったの?
概要によると、申し出たのは群馬県に住む50歳代の夫婦です。平成21年に不眠や頭痛、めまい、吐き気などが出て、平成24年10月に委員会へ調査を申し出ました。
委員会は、この件のほかに、似た訴えの18事案も調べています。合わせた19事案について、症状や置き場所を、家を訪ねて聞き取りました。症状でいちばん多かったのは不眠で、引っ越しや、アパート・ホテルへの一時的な避難に至った事案もあったと書かれています。
同じ家に住んでいても、症状の出方は人によって違っていました。
同じ住宅に居住していても、健康症状を訴える者と訴えない者がいた。
申出の家では、音を実際に測っています。症状が重いという部屋で40Hzの音が目立って測られ、その大きさは人がやっと聞こえるかどうかの境目とほぼ同じだったと、概要は書いています。調べた結果を受けた一文は、次のとおりです。
これらのことから、ヒートポンプ給湯機の運転音に含まれる低周波音は、健康症状の発生に関与している可能性があると考えられる。
置き場所について、何が分かったの?
置き場所と症状は、関係があったの?
概要は、寝室までの距離が短いものや、窓などの開口部に近いものが多かったと書きます。そのうえで、業界団体が出している「据付けガイドブック」に沿って置かれているとは言い難いものが多く見られた、と続けました。
ガイドブックが示す置き場所の選び方は、概要の注に3点で写されています。
(1)お客様および隣接するご近所様の寝室の傍は避ける。
(2)ヒートポンプユニットの近辺(上方向含む)に窓や床下通風口等の音の侵入口があれば極力距離をとる。
1点目は、自分の家の寝室だけでなく、隣の家の寝室の傍も避けると書いています。音を聞くのは、機械を持っている人とは限りません。(3)ヒートポンプユニットの周囲に極力スペースを設け、壁や塀で音が反射しないように工夫する。
委員会は、このガイドブックが工事をする側にどれだけ知られているかも尋ねました。答えは、次の一文です。
据付けガイドブックの認知率は、電器店及び電気工事業者では約2割、工務店及びハウスメーカーでは約3割であり、普及が不十分である状況が判明した。
委員会は、国に何を求めたの?
調査のあと、何か対策は決まったの?
意見は、根本的に防ぐ対策を示すのは現時点では難しい、と前置きしたうえで、8つの取組を並べました。経済産業省に向けた2つ目の項目が、買う側に関わるものです。
設置状況によってはヒートポンプ給湯機の運転音に起因した健康症状を訴える者が生じる可能性があることを、製品カタログに記載する等により、消費者に伝わるよう、製造事業者を指導すること。
環境省には、音の測定値の扱いについての求めがありました。環境省が示す「参照値」を下回っても、低周波音が原因でありうる、という点です。概要の結びにも、同じ趣旨の文がありました。
参照値以下であっても慎重な判断が必要な場合があることについて、一層明確に周知すべきである。
消費者庁の頁には、この意見を受けた各省庁の対応の文書も、平成26年から令和元年まで並んでいます。この記事では、その中身までは読んでいません。
補助金の申請の仕組みは、エコキュートの国の補助金は、家の人が自分では申し込めないで読みました。置き場所は、補助金の申請とは別の話として、工事の前に決めておく部分です。
この記事で確認したこと
・一般的に午後11時から午前7時に動き、音は主に屋外のヒートポンプユニットから出る(概要)
・調べた19事案のうち13事案で、発症者の寝室まで5m以下だった(概要)
・据付けガイドブックは、自分と隣家の寝室の傍を避ける・開口部から離す・周囲にスペースを取る、の3点を示す(概要の注)
・ガイドブックの認知率は、電器店・電気工事業者で約2割、工務店・ハウスメーカーで約3割(概要)
・委員会は、設置の注意を製品カタログ等で消費者に伝えるよう、経済産業省に求めた(意見)
よくある質問
自分の家のエコキュートの音が、健康に影響するかは分かりますか
この記事では判断できません。報告書も、低周波音が人体に与える影響の有無や仕組みには不明な点がある、と書いています。意見は、消費者庁に対して、この種の苦情相談への対応方法を地方公共団体に周知するよう求めていました。
報告書は、ヒートポンプ給湯機を使わないよう勧めていますか
勧めていません。意見が求めているのは、置き場所の注意の周知、製品の改良、症状が出たときの対応の改善です。
報告書が古いので、今の製品には当てはまりませんか
報告書は平成26年のもので、当時の製品を調べています。今の製品の運転音がどうかは、この記事では確かめていません。
この整理が変わる条件
- 消費者庁が、この報告書の頁や、意見への対応の文書を改めた場合(本記事は2026年9月27日に読んだ内容)
- 据付けガイドブックが改訂され、置き場所の選び方が変わった場合
- 低周波音の人体への影響について、新しい調査の結果が公表された場合
点検や交換を持ち掛ける訪問が来たら?
その場では契約しないのが、国民生活センターの助言です。点検の電話や訪問の記事で、発表の事例とアドバイスを読みました。
出典
- 消費者庁 消費者安全調査委員会「家庭用ヒートポンプ給湯機から生じる運転音・振動により不眠等の健康症状が発生したとの申出事案」 https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_002
- 消費者安全調査委員会「消費者安全法第23条第1項に基づく事故等原因調査報告書【概要】」(平成26年12月19日・PDF) https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_002/pdf/2_houkoku_gaiyou.pdf
- 消費者安全調査委員会「消費者安全法第33条の規定に基づく意見」(平成26年12月19日・PDF) https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_002/pdf/2_iken.pdf
ヒートポンプユニットの置き場所を決める前に、自分の家と隣の家の寝室・窓からの距離を、工事をする事業者と一緒に図面で確かめてください。
上の出典を引いて確かめた日: